Side Arm Launchinng

Oct. 2009

2004年12月のJRGA会報に載せた記事を紹介します。

Side Arm Launching

 この10年、ハンドランチグライダーは、オーバーヘッドスローの通常投げにより、一般に広まってきました。このころの競技と言うと、パワフルな投げができる人か、軽い機体を手に入れた人たちが中心に上位を争っていました。この結果、競技会での上位入賞者の顔ぶれはいつも同じようだったと思います。
 それが、Side Arm Launching(以下SALと言う)の機体が導入されることにより、ハンドランチグライダーの飛びが一変したわけです。獲得高度は15メートル前後から一気に40メートル前後になり、さらにパワーがない人でも遠心力を使ったLaunchingにより、少ないパワーで効率の高い投げ(体に無理がかからない)ができるようになったのです。
 このSALの初期段階では、翼端を握る方式が中心で、振り子のように投げ上げる方法や、1回転して投げる方法が行われ、SALができるのは“特定な機体でないと飛ばない”と思われていました。 
 このSALが一般的(誰でも飛ばせる)になったのは、翼端デバイスとして、ペグが導入されたことにより、機体をSALでだれでも簡単に投げられるようになったからです。
 簡単にSALの推移を書きましたが、ここではペグを用いたSALのポイントを解説したいと思います。資料としては、私が今までホームページを通して紹介してきた資料を含めてまとめてみました。

用語の定義
解説をするにあた用語の定義を以下に示します。
 SAL: Side Arm Launchingの頭文字を取った略語で投げる形態を示す言葉です。
 DLG: Disk Launching Gliderの頭文字を取った略語で、機体の形態を示す言葉です。

SAL始めた動機
 私がSALを始めた動機は、前記で述べた“特定な機体でないと飛ばない”と思っていたところ、筑波の信太さんが通常機をSALで飛ばすのを見たことが始まりでした。理由は信太さんが飛ばせるのであれば、私にもできると自覚したことから始まりました。それと同時にヨーロッパのホームページで翼端にパイプ(ペグ)を刺してあった機体を見たことにより、この方法であれば飛ぶと直感したわけです。

SAL投げ開始
 普通に機体を回したら、速度差により外翼が上がることが分かっていましたので、ペグの取付位置を重心より後退させることにより、できるだけ揚力差を少なくするようにしてみました。そして、このことを実証するためペグを取り付ける前に、実際に翼端を持って回してみて、効果を確認しました。
 実際の取り付けは、以下のオリジナル機で行いました。(左の機体)

私の機体の翼は、むくバルサとトラスリブ構造であったため、わずかな補強でDLG化させることができました。結果は1発目からSALでうまく飛びました。それで以降数々のオリジナルDLG機で試行錯誤を続けました。

指のかけ方
 翼端を握る方式だと、余分な力(握力)が必要となり、何回か握ってみたところ自分にはしっくりいかないとわかりました。そこで、昔行ったアーチェリーの経験が役に立つことになったわけです。アーチェリーで指にかける行為(弓を引く動作)とペグに指をかける行為は、ほとんど同じで、指にかかる荷重はアーチェリー(私は38ポンドの弓を引いていた経験あり)ほどでないため、問題なく投げられると判断したわけです。

ペグの利点
 ペグへの指かけは、指の第一関節にパイプ(ペグ)に引っかけるだけです。このことにより翼をホールドさせるのでなく、翼を上下左右(前後)にフリーにさせ、翼に負荷(よけいな力)がかからないようにさせる効果となるわけです。要するに、指とペグ間の点接触により、腕から機体に入る荷重方向が一直線となり、あたかもハンマー投げのような状態となるのです。

投げの基本
 子供のころ、石にひもを巻いて投げたことがある人もいると思いますが、なければハンマー投げの投げ方を思い出してください。これは、ひもをくるくる回して、投げる方向に、ただ離すだけで目標に飛んでいったと思います。これが、SALの基本です。

ペグの位置
 結論を言うと、重心より20〜40mmの範囲が適切であると思います。この位置は内翼(ペグ側)と外翼との揚力差を減らすことにより回転時の外翼上がりを防ぐものです。最近のUコンのワイヤー位置と同じ考えです。

機体
 機体ですが、ペグの位置が適切であれば、どんな機体でも飛びます。ただし、スムーズな投げができればですが。
 私は、ラダー機を約1年間に10機以上作っては飛ばしましたが、この間にさらにエルロン機を2機作ってみました。この時に、こだわったことは、ラダーにオフセットを付けず飛ばすことでした。結果として、ラダー機は2段上反角(中央に上反角あり)より、1段上反角(中央に上反角なし)のほうが、Launchingの巻き込みが少なくまっすぐ上昇していくことに気づき、さらにエルロン機(上反角3度)の方がよりまっすぐ上昇していくことに気づきました。
 そして、これらの経験を1年後に登場した「Radina DLG」に応用しました。

Radina DLG
 SALを始めた頃、中島さんが日本に高価なシャレー機(ファイヤーワークス)を持ち込み、昭和記念公園ハンドランチグライダー大会に持ち込んで飛ばしていました。それまではバルサや発泡スチロールの翼が多かったのですが、シャレー翼の機体が加わり始めた時期でした。
 そんな時に、たまたまNSPのホームページを見ていて「Eniguma DLG」を見つけました。この機体はブルガリアのNiki社であることに気づき、この会社の機体なら手に入れることが比較的容易であると思い、「RC-Sailplane.com」の浅原さんに依頼しました。結果、連絡がついた時点で、わずか2週間で手に入れることが出来ました。(余談ですが、この機体名は最初Hilight DLGと呼んでいましたが、Niki社の要請で、日本名は後日、Nikiの娘さんの名であるRadinaに替わりました。)この機体は、シャレー翼であるにもかかわらず比較的安価であったため、その後かなり普及しました。

ここからは実際のSAL投げを解説します

巻き込み
 SALで機体を投げた場合、リリース後に内側(投げて側)に、入り込んでくる特性があります。この巻き込みを最小にして投げることがSALでの成功のポイントとなります。

投げ方で最小にする方法もあるのですが、世の中急ぐ人が多いので、とりあえず機体構造による最小化方法を紹介します。
 (1) 少ない上反角の機体、ラダー機よりエルロン機を使用する。
 (2) 風見効果による直進性をよくするため、テールを長くする。
 (3)上記に加えて、垂直尾翼面積を増やす。
その他、ジャイロを積んで強制的に最小化する方法もあります。

左右翼のバランス
 当初、両翼のバランス(ペグ側が若干重たくなる)を考慮して、外翼にバラストを付けたこともありましたが、「Radina DLG」を飛ばした時、すばらしいシャレー翼に穴をあけてバラストを付けるのがもっていないので、ペグ側が重い状態で飛ばしてみました。結果、飛行にはほとんど影響しなかったので、それ以降の機体にはバラストを搭載するのをやめました。

初心者の投げ
 SALで投げる場合、力が入るとLaunchingが荒れてきます。とくに初心者は力を入れて投げる傾向があり、これにより、うまく投げ上げられなくなってしまっています。従って、最初は軽く投げることから始めることが重要です。

助走
 私の場合は、走り出し(助走)はリズムを作る目的でゆっくり歩き出します。この時は機体をただ引いていく感じで行います。初めての人がSALを行うと、ここから機体を回し始めて、Launchingのバランスを壊してしまうことが多いようです。
 このリズムを作るやり方ですが、私は中学生の特、走り高跳びを行っていたので、このとび方がけっこう役にたちました。参考まで、SAL時の軸足は左足で、ベリーロールする時と同じです。ようするに、助走では機体を回さず、引いていく感じでスタートしてください。

バックスイング
 機体を回す(引きつける)より早く腰を回して、体と腕をエビ状にそらせ、自然にスプリングバックさせます。結果、腰を使って投げるようにすることがポイントになります。(腕が自然に回る感じ)
 この時、軸足(左足)を曲げることにより、体が前傾し、結果自然と機体が肩位置まで上がり、全体でスイング方向が傾き、Launching体勢となるわけです。
そして、ここから腰をさらに回して一気に機体を振り回してリリース体勢に移ります。

リリース
 基本的にはペグに指をかけ、機体がLaunching方向になったら離すだけです。ここでのポイントは、リリース直前に右肩が上がらないように、腕を伸ばすことが肝心です。それと、リリース時に内側に腕を巻き込むようにすると、機体は内側に回りこんできてエネルギーのロスとなってしまいます。

リリース後の上昇角度
 機体を上昇させる方向は、45度から50度くらいの範囲になるように投げ上げることが高い獲得高度を取る結果となります。この角度の調整は、リリース角度でなく、Launching時のフラップアップ(プリセット2〜3ミリ)か、重心位置調整で行います。なお、この時注意することは、エレベーターの位置で、ニュートラかあるいはアップぎみであるか確認しておくことです。もし、ダウンが入っていた場合、Lauching初期は高速のため、エレベーターの効きで機体が下向きになり最悪、墜落させる結果となりかねません。

フォロースロー
 フォロースローは、重要です。投げ終わった後、機体を指すように右腕を伸ばすことにより、機体に直進性を与えます。そして、機体が上昇するところを見ながら、そっと右手を送信機のスイッチに手を当て、フラップをニュートラに解除します。

飛ばし方
 もちろんグライダーですからサーマルを探して高度を獲得するのが基本ですが、SALで高度が取れるようになったら、大型機なみに、思い切って広いエリアを流すように飛ばすのもいいと思います。その方がサーマルを探しやすいからです。また「Radina DLG」などの進入性野よい機体は遠くから戻すことが容易だからです。

 だらだらと書きましたが、SALは始まったばかりですので、これが正しいと言う理論はありません。とくに数年前々まで翼端を持って振り回すことによりグライダーが飛ぶとだれが思ったでしょうか!またこれから、とんでもない投げ方が始まるかも知れません!みなさん、グライダーを進化させることを忘れずにSALを楽しみましょう。

以上

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10/1/2011